飛行機嫌いのディーヴァ

夜のチェチーリア・バルトリチョン・ミョンフンのリサイタル@タケミツメモリアルに向けて気合を入れて今日は振休にしました。
何しろこのディーヴァに心酔するブル美さんなんて、5年以上前にメトでの来日にあわせたリサイタルを、謎のドタキャンという憂き目にあっております。
「交通事故」、「風呂場で転んで怪我した」、はたまた「地震が怖かった」など、その時の来日中止の理由にはいろいろな噂がありましたが、実際のところバルトリが「飛行機恐怖症」なのは確かなようで、本当にそれでこんなに長い間来日がなかったのだとすれば、言葉がありません。
蓋を開けてみると、アンコール4曲が終るまで、ヒロイックだったりコミカルだったり、表情豊かなその魅力に圧倒されっぱなしでした。もちろんフィナーレは観客層立ち。
チェネレントラなどの超絶技巧にも舌を巻きましたが、私が一番心に残ったのは、「易しい曲」であるベッリーニの「ゆかしい月よ」の神々しいまでの美しさでした。
歌とはつまるところ「語り」であり、バルトリは曲の持つ世界を、どんなシンプルな曲でも余すところなく語りつくしてくれるのです。
チョン・ミョンフンのピアノも、水彩画のような淡い音色でバルトリの歌声に完璧に寄り添い、伴奏のあるべき姿を見せてくれました(一箇所大胆にミスタッチをして舌を出していましたが)。
「メトで見たけどたいしたことなかった」とバルトリに辛口だったA君と、会場入り口でばったり遭遇。宗旨替えの理由については、あえて訊かないでおいてあげました。